茶カテキンの効用
毎日の食事で欠かせない「お茶」。何千年も昔から私たちの生活に密接に繋がってきました。私たち日本人は、緑茶を常飲しますが、世界のお茶の消費量の大部分が紅茶であり、その7割を占めています。
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実は、緑茶、紅茶、中国茶、世界のお茶は全てツバキ科カメリア属の木の葉からできています。お茶の葉を発酵させるか、させないかによって大きく分けられ、発酵させないものが“緑茶”、発酵させたものが“紅茶”、半発酵や後発酵だと中国茶となります。
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さらに、木の品種や産地、製法などにより、多くの種類の緑茶や紅茶、中国茶ができます。また、日本では健康茶として「どくだみ茶」「杜仲茶」などがありますが、いずれもお茶の木以外の植物の葉を原料にしているので、正しくは「お茶」とは呼べません。
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そもそもお茶は、約2千年前に「薬」として口にしていたのが始まりです。当時は、食べ物の安全性を確かめるため、毒味をした際の解毒剤として服用されていました。その効果は、近年注目されている“カテキン”が裏付けることとなりました。お茶の苦味成分であるカテキンは、食中毒菌を死滅させる「殺菌作用」と、その菌が出す毒素を消してくれる「抗毒素作用」があることが証明されています。昔の人の知恵には科学も驚きだったことでしょう。
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この“カテキン”をはじめとする「お茶」の効用をいくつか紹介します。
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【1】美容効果
美肌の基本、コラーゲン合成を助けるビタミンCがコップ1杯で、レモン半分の果汁と同じくらい採ることが可能。さらに、お茶のビタミンCは比較的熱に強いため、熱いお茶の中でも残存しやすい。また、シミの原因になるメラニンの合成を阻止する。
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【2】ダイエット
ノンカロリーなうえに、糖分や脂質の代謝を促進。また、ご飯や、パンなどに多く含まれる「でんぷん」は、ブドウ糖に分解されて体内に蓄積されるが、その分解を防ぐため、蓄積されにくい。
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【3】発がん抑制
お茶葉の産地では、お茶をよく飲むため、がんによる死亡率が低いことが証明されている。
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【4】血圧降下
カフェインによる動脈の拡張、血液循環の改善により血圧を正常に保つ。
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カテキンは熱いお湯程多く溶け出します。目安は80℃、十分に沸騰したお湯で入れるのコツです。一度出したお茶の葉にはカテキンが残るので、二番茶も頂きましょう。また、発酵させたお茶は、カテキン含量が少なくなるので、カテキンの効果を期待するなら紅茶より緑茶をオススメします。
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ところで、日本の文化の中にはおもしろいお茶があります。島根の「ぼてぼて茶」は、泡立てた茶の花に、番茶を注ぎ、さらに泡立て、その中にご飯や黒豆、たくあんといった具を入れます。富山の「ばたばた茶」は、ぼてぼて茶から伝わったもので、煮出した番茶に少量の塩を加え、泡立てたものです。沖縄の「ぶくぶく茶」は、煎った米や、ピーナッツなどをお茶とともに泡立てたものです。どの食べるお茶もメレンゲのように泡立ち、お茶とは思えない一品ですが、機会があれば飲んで、いや、食べてみたいです。
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茶の間、茶碗、ちゃぶ台、茶柱、茶色…「茶」という字は生活の様々な場面で使われています。「お茶の間」という言葉には、家族の集まる場所=生活の中心という意味がこめられています。古い家では、囲炉裏を囲み食事をし、語り合い、そしてもちろんお茶も楽しんでいました。そうした家族みんなで心を通わせる場所が「茶の間」という言葉として語り継がれています。
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他にも、日常的に何の違和感なく使っている『茶色』。色の名前には、赤、青、黄という中国の漢字が意味するものと、桃色、橙色、空色、灰色という自然の物にたとえたものがあります。しかし、茶色はお茶の色からきているとされていますが、どちらかといえば緑色に近い色です。
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なぜ、「お茶」から「茶色」になったかと言うと、ふきんでお茶を拭き、染み込み、使っていくうちにその色は緑色から茶色になってしまいます。茶渋というと想像しやすいかもしれません。また、昔のお茶は今の緑色したお茶とは違うものだったことも、茶色と呼ばれる理由になったと思われます。「お茶」は飲むということだけでなく、人と長く深い歴史で繋がってきたことを感じずにはいられません。
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最近では、飲む目的以外にお菓子や石鹸といった商品も目にするようになりました。お茶の間からリビングに、急須からペットボトルへと変化し、お茶は「お家で飲むもの」から「お店で買うもの」となりつつありますが、私たちの生活から「お茶」がなくなることはないでしょう。