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発がん性物質 アクリルアミド

発がん性物質 アクリルアミド

 想像してみてください。焼きたてパンの香り、揚げたてのフライドポテト、コーヒーの香り、熟成された味噌の味…想像するだけで、よだれが出てきませんか?この香り・味・すべて「メイラード反応」から生成されています。
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 「メイラード反応」は、別名「アミノカルボニル反応」と言い、炭水化物分子(でんぷん・ブドウ糖など)がアミノ酸と反応して起こります。ほとんどの食品には炭水化物とアミノ酸が含まれているので、ごく当たり前の化学反応です。パンやクッキーの焼き色や、味噌や醤油の色、熟成された日本酒の色はすべてこの反応で“褐色”にされたものです。この反応は、着色と同時に食欲をそそる“調理香”も発生します。褐色色素や香気成分以外に、このメイラード反応でできる「アクリルアミド」という成分が今注目され始めています。
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 日本でアクリルアミドといえば、工業用製品の原料として使われており、毒劇物取締法では“劇物”に指定されています。体内に入ると、肝臓で解毒されて尿中へ排出されますが、一部は赤血球や骨格細胞に関わるたん白質と特異的に結合します。そのため、神経系のたん白質と結合し、神経障害(筋力低下、感覚異常、歩行障害など)を起こすことがわかっています。
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 また、細胞を傷つけるため、発ガンリスクが増加するとも言われています。国際がん研究所では、ヒトでは発がん性がある十分な証拠はないものの、動物実験では十分な証拠があるとして「人に対しておそらく発がん性のある物質」に分類しています。そのアクリルアミドが食品のメイラード反応で生成されるとわかったのは、つい最近のことです。
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 食品の炭水化物分子がアミノ酸の一種「アスパラギン」とメイラード反応するのが主要生成経路とされていますが、今のところ、そのメカニズムはまだはっきりと解明されていません。そのため、原因物質・反応ともに断言はできませんが、生の食品には含まれないため食品の加熱調理が大きく関係しているのではないかとされています。加熱調理というのは、食品を食べやすくする、風味を生み出す、食中毒を予防する、保存性を高めるなど、料理において欠かすことのできない方法の一つです。
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 アクリルアミドの濃度は、調理方法・成分など様々な要因で異なってくるので、口にするアクリルアミドの量を調べることは困難です。微量でも身体に影響を及ぼす可能性はありますし、許容摂取量を決めることがまだ出来ません。日本以外で規制を行っている国はごくわずかです。
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 アクリルアミドをできるだけ摂らないようにする方法として、以下の2点が考えられます。
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【1】食材
アクリルアミドを生成すると考えられているものを控える。多いとされているものには、じゃがいも加工品(ポテトチップス、フライドポテトなど)や小麦加工品(ケーキ、ビスケットなど)、コーヒーやチョコレートなどがあります。比較的飲む機会の多いコーヒーからは、アクリルアミドを多く摂っている可能性があるといえます。
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【2】調理方法
アクリルアミドは、加熱によって生成されるので、加熱をしないことが一番です。しかし、加熱をしないわけにはいきません。加熱する場合は、揚げる・焼くよりも、「煮る」「茹でる」ほうがアクリルアミドの生成が少ないとされています。アクリルアミドは水溶性で、水にとてもよく溶け出すので、その性質を活かした調理をするのがよいでしょう。
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 この2点を気をつけることで、いくらかのアクリルアミドを取り除くことができます。しかし、ほとんどの食材でメイラード反応は起きていますので、すべてを摂らないことは不可能です。揚げものやお菓子、コーヒーなどを必要以上に摂りすぎないよう心がけましょう。
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 食の安全性が謳われる現代、溢れる情報から正しいことを得るのはとても難しいことです。同じ食品でも良い点・悪い点を併せ持っているので、ひとつのものに偏るのではなく、たくさんの食材をバランスよく摂ることが大切です。