鰯・鯵・秋刀魚 読めますか?
お寿司屋さんに行くと、湯飲みにびっしりと書かれた魚の名前、いくつ読めるか挑戦してみるも案外知らないものです。
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たいていの魚には漢字があてられ、その魚の特徴や性質、見た目などから語源がきています。語源を知ると、意外な発見や驚きがあり、魚をより身近に感じます。漢字の勉強にもなるかもしれませんね。では、魚の漢字の語源や豆知識を少し紹介しましょう。
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まずは「魚」という言葉、諸説様々ありますが、「酒(さか)菜(な)」からきたと言われています。魚の訓読みには「うお」「さかな」の2つ読みがあり、「うお」は魚類の総称、「さかな」は食べ物と、区別されています。
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「鮪」 マグロ:背や目が黒いことなどから、本来は「眼黒」「真黒」と書く
「鯛」 タイ:日本全国の周囲どの海でも通年獲れる魚という意味、おめでたい魚のタイにあやかろうと、○○タイと名前のつく魚は多いが、正真正銘のタイ科は日本国内13種のみ
「鯵」 アジ:旧暦の3月頃から最も美味しくなるため、漢字の三→参
「鱈」 タラ:初雪の頃から獲れるため、また腹側が真っ白であることから
「鮎」 アユ:アユを釣って戦の勝利を占ったことから、香りがよいので香魚とも書く
「鯡」 ニシン:年貢を納めるのに米ではなくニシンを納めていた所があったことから「魚にあらず」
「鰯」 イワシ:水揚げするとすぐに死んだり、他の魚によく食べられてしまうため「弱し」から
「鰹」 カツオ:昔は生で食べることはなく、堅く干してあったことから、堅魚(かたうお)とも呼ばれた
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その他にも「鱧」 ハモ、「鯖」 サバ、「鱚」 キス、「鰆」 サワラ、「鰈」 カレイなど、魚偏のつく魚は実にたくさんいます。漢字からいろいろと想像してみるのも楽しいものです。なかには魚偏のつかない魚介類もいます。
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「愚痴」 グチ:浮き袋を使って「グッグッグッ」と鳴く声が愚痴をこぼしているように聞こえるから
「細魚」 サヨリ:見た目どおり、細い姿を表現して
「秋刀魚」 サンマ:秋に獲れ、刀に似た細長い姿から
「蛸」 タコ:墨を使って姿を消し、敵から雲隠れすることから
「海栗」 ウニ:海の中の栗のような姿をしていることから
「海老」 エビ:腰の曲がった海の老人みたいな様から
「蝦」 エビ:昔の人は、エビを虫かどうか迷ったため
「河豚」 フグ:豚に匹敵するような美味しさから、福の「フク」あたると死ぬから「テッポウ」とも
「笠子」 カサゴ:触るとカサカサして皮膚病のようになっているようだから
「間八」 カンパチ:顔を正面から見ると八の字に見えることから
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その他「鰧」 オコゼ、「薊」 アザミなどもあります、どんな魚か見てみたいですね。愚痴の語源などは笑ってしまいますが、魚自身は自分がどんな名前を付けられているか知るよしもないでしょう・・・
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面白いことに、同じ漢字なのに、日本と中国では、違う魚を指しているものもあります。値段の高い鮭(サケ)だなぁと思い、注文すると「フグ」が出てきます。鮎(アユ)の塩焼きと思って頼むと、ナマズの塩焼きが出てきます。鮪(マグロ)が大好きな方は、チョウザメ料理が出てくるので、中国で魚料理を注文する時は注意してください。
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これほどにたくさんの魚介類を食すのは、世界でも日本が一番ではないかと思います。また、刺身のように生食を好むのも日本人ならではですが、これは周囲を海に囲まれ、いつでも新鮮な魚介類が獲れるからでしょう。
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かつては、アジやイワシ、サンマなどの魚を箸で器用に食べてきた日本人ですが、最近では小骨を嫌い、刺身や握り寿司、骨のない切り身が主流になりつつあります。本来の魚の形を知らない子供達が増え、切り身が海を泳いでいるなどと言う笑い話が冗談ではなくなるかもしれません。
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昨年の秋はサンマが獲れず高価でしたが、今年はどうでしょうか?脂ののったサンマの塩焼きに大根おろしを添え、「秋刀魚」の漢字の語源に思いを馳せると、より一層美味しさが増すこと間違いなしです。