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栄養レシピ&コラム 2011年公開分
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香りまつたけ、味しめじ

香りまつたけ、味しめじ

 きのこのおいしい季節になりました。現在は、人口栽培の発達により、一年中流通するようになりましたが、やはりきのこの一番美味しい時期は9~11月です。
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 きのこ類と呼ばれるものは、日本では1000種以上あるとされます。その中で食用としているのは約50種、スーパーなどで見かけるもの以外にも、地方の山間部に行くと、珍しいきのこがたくさんあります。
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 きのこには、独特の旨味成分、香り、食感に加えて、数々の体によいとされる成分が含まれています。その旨味成分はアミノ酸やグアニル酸で、加熱することで増加し旨味が引き出されます。グアニル酸は昆布に含まれる旨味成分のグルタミン酸といっしょになると、さらに数十倍の旨味にアップする相乗効果があります。きのこ料理に昆布だしを使うと、とてもおいしくなります。
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 栄養価をみると、なんといっても特徴的なのは低カロリーであることと、その豊富な食物せんい。便秘の解消や生活習慣病の予防、美容効果も期待できます。現代人は高カロリーで、食物せんいが不足気味なので、野菜に加えてきのこも積極的に食べたいものです。また、脂質の代謝を助けるビタミンB群やミネラル類も豊富に含みます。
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 加えてきのこには、エルゴステロールという物質が含まれ、日光にあたることでビタミンDに変化します。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の形成に欠かせないビタミンです。きのこと乳製品を一緒に食べると効果的です。さらには、血中コレステロールを低下させるエリタデニンや、免疫力のアップや、抗ガン作用が期待されるβ-グルカン、その他にも抗腫瘍活性成分などが見出されており、注目されています。
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 普段よく食べるきのこの特徴をそれぞれに見てみると・・・
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しいたけ:
ビタミンB群をバランスよく含む。干すことでビタミンDは、生に比べ9倍近くなる。生しいたけは食べる前に1~2時間、日光にあてるだけでも有効、干ししいたけも機械乾燥が多いので、購入後一度日光にあてるとよい。β-グルカン、エリタデニンなど含む。
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えのきたけ:
ビタミンB群に加えて、カリウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛などミネラル含有量が多い。エキスにはガン予防の効果が期待できるとされる。白いのは人口栽培、天然物は茶褐色で粘りがある。
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ぶなしめじ:
主に「しめじ」や「ほんしめじ」として売られているものは、本来のしめじとは別種の「ぶなしめじ」のこと。天然のしめじはまだ人口栽培に成功していない。旨味成分のアミノ酸を豊富に含む。
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まいたけ:
ビタミンB1、B2、ナイアシン、カリウム、亜鉛、β-グルカンなど高栄養が注目される。歯ごたえと独特の香り、旨味がある。きのこの中では比較的最近の70年代に人口栽培されるようになった。その名の由来は「見つけると舞うほどうれしい」ことから。
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きくらげ:
耳の形に似ているので、木耳と書く。乾燥させてあるのでビタミンDが多い。食物せんいも豊富(100g中で見ると全食品中最高)あまり家庭で調理されないが、水戻しして炒め物やスープなど、積極的に食べたい。
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 きのこは水洗いすると風味が落ちるので、汚れはぬれ布巾や、湿らせたキッチンペーパーで軽くこする程度で十分です。香りや食感を生かすためにも、加熱しすぎに注意しましょう。
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 ところで、きのこの王様はやはり”まつたけ”でしょうか。特有の芳香と食感が日本人を魅了するのか、はては高価なことが魅力なのか?まつたけは人口栽培できないので天然物のみ。年々国産は減り、韓国、中国などからの輸入物が増えています。もし人口栽培ができるようになると、きっとその魅力は半減してしまうのでしょうね。「香りまつたけ、味しめじ」と表現されるように、まつたけの命はなんといっても香りですが、旨味はしめじや他のきのこの方が豊富です。
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 当病院のある広島県北広島町の山でも、まつたけやいろいろなきのこが採れますが、その数は年々減少しているそうです。ちなみに今年のまつたけは香りが少ないと聞きました。ぜひ自分の舌で確かめてみたいものです。