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古き良き調味料 塩麹

古き良き調味料 塩麹

 昨秋頃から「塩麹」がテレビ番組で取り上げられるなどして話題になっています。最近ではスーパーやデパートに塩麹のコーナーが作られ、入荷待ちになるほど売れているようです。もともと塩麹は東北地方に古くからある伝統的な調味料でした。突然有名になり、地元の方は驚かれているかもしれませんね。
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 塩麹のもとになっている「麹」は、しょうゆや酢、味噌、漬物作りから日本酒や焼酎などのアルコール醸造にも使われるなど日本食に欠かせない大切なものです。かつては全国にたくさんの麹屋があり、家庭でも味噌や漬物作りに使っていましたが、現在では麹を目にする機会はほとんどなくなりました。塩麹が注目され、初めて見る方も多いのではないでしょうか。
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 麹は蒸した米や麦、大豆に麹菌というカビの一種を生やしたもの。カビといっても体に悪いものではなく、むしろとても有用な微生物なのです。麹菌が菌糸をのばして繁殖していく過程で様々な酵素を作り出します。その数は100種以上といわれます。
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 酵素のひとつ、プロテアーゼはたんぱく質をアミノ酸に分解、アミラーゼはでんぷん質をブドウ糖に分解し、食材の持つ旨味や甘味を増やして、より美味しくさせます。美味しいだけではなく酵素によってたんぱく質やでんぷん質が分解(発酵)されるので消化吸収もよくなります。
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 その他にも脂肪を分解する酵素リパーゼなど多種類の酵素が複雑に絡み合い、体内での栄養素の分解や吸収に重要な役割をしています。また腸内環境を整える、代謝をよくする、免疫力を高めるなど私たちの体にとって有用な働きをすることがわかっています。先人はそんな具体的なことは知らなかったでしょうが、自然と暮らしに取り入れ、麹菌を今日まで大切につないできてくれたのです。
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 そんな体に良い麹ですが、そのものを食べるのはなかなか難しく、そこで注目されたのが塩麹です。塩麹は米麹(米にニホンコウジカビを繁殖させたもの)に、塩と水を加え一週間程度かけて発酵させたもの。米麹以外に玄米麹や麦麹などでも作れます。この塩麹に魚や肉を漬け込むと酵素が食材に浸み込み旨味や甘味を引き出し、肉質もやわらかくしてくれます。
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 また野菜を数日漬け込むと塩味に加えて麹の旨味や甘味が加わり、美味しい漬物が簡単に作れます。その他にも調味料として和え物や炒め物、煮物などに使え、他の調味料と合わせてタレやドレッシングを作るなど幅広く応用できます。
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 先日、米麹を買って塩麹を作ってみました。寒い時期だったせいか発酵に10日程かかりました。一日に1回かき混ぜ、米麹と水が日に日になじんでトロトロの状態になっていき、プツプツと発酵して飛び散っている跡を見ると、麹菌は生きていると感じます。出来上がった塩麹を鶏胸肉にまぶして一晩漬け込み焼いてみると、固くなりがちな胸肉がしっとりと柔らかく、味付けも塩麹だけなのにとても美味しく好評でした。発酵をゆっくりと待つ時間、食材が美味しくなるのを待つ時間が毎日の気ぜわしい食事にゆとりを与えてくれるような気がします。
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 ともかく塩麹によって食材の持つ美味しさがさらにアップされ、体にも良いとなれば流行るのもわかります。塩麹の詳しい作り方や使い方は多くのレシピ本なども出ていますので興味のある方はぜひお試しください。
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 麹菌は日本の気候風土から発生した微生物で日本でしか繁殖できません。この麹菌のおかげで、これまでの私たちの食は成り立ってきたのです。なぜ今塩麹なのか?その背景には現在の偏った食生活に少なからず不安を感じている人が多くなってきたからかもしれません。これが一時のブームに終わらず、日本の食の原点を見直すきっかけになればよいと思います。