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亜鉛不足が招く味覚障害

亜鉛不足が招く味覚障害

 私達は食べ物を口にする時、その見た目、におい、口当たり、味などの情報を脳に伝達して美味しさを感じています。なかでも味覚はとても重要な情報源ですが、最近味がわからなくなる「味覚障害」の人が増えています。
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 味覚には、甘味・酸味・辛味・苦味・塩味そして旨味があります。これらの味を舌や喉の奥に広がっている味蕾(みらい)という器官で感じとります。味蕾はその字のように花の蕾(つぼみ)の形をしたごく小さな器官で、約7000個あり、この味蕾から味覚神経を介して脳に味が伝えられるのです。
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 この経路に何らかの異常が生じることで、味覚の減退や消失、異味症、悪味症などの味覚障害が起きます。原因は不明なこともありますが、薬の副作用、病気、心因性、ストレスなど、なかでもいちばん多いのが亜鉛不足によるものと言われます。
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 亜鉛は細胞の新陳代謝に必要不可欠なミネラルです。とくに味蕾を形成する細胞は新陳代謝が早いため、亜鉛が不足すると代謝が鈍り、味覚に異常を起こしやすくなります。また味覚障害だけではなく、肌荒れ、口内炎、脱毛、貧血、傷が治りにくいなど、小さな子供であれば発育不全が生じる場合もあります。
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 亜鉛は体内で作り出すことができないので、食事から摂取する必要があります。通常バランスのとれた食事をしていれば、不足することはないでしょう。しかし、極端なダイエット、朝食抜き、ファーストフードやコンビニのお弁当、インスタント食品ばかりなどの偏った食事では、当然他の栄養素と同じく亜鉛も不足してしまいます。
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 亜鉛は食品を加工する過程で失われやすく、さらに加工食品や清涼飲料水などに含まれる、フィチン酸やポリリン酸などの食品添加物は、亜鉛の吸収を妨げます。また激辛な食べ物は味蕾そのものを壊すこともあり、摂り過ぎは禁物です。その上、アルコールやストレスの多い生活は、体内に蓄えた亜鉛を尿中にどんどん排出させます。亜鉛不足による味覚障害は、まさに現代病といえるかもしれません。
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 では、亜鉛はどんな食材に含まれているのでしょうか?なんといってもいちばん多いのは牡蠣(カキ)です。海のミルクと言われるほど、亜鉛以外の栄養価にも富んでいます。亜鉛の一日の必要量15mgを2粒で補うことができます。その他に、牛もも肉、豚や鶏レバー、うなぎ、ほたて貝、卵黄、海草、大豆、納豆、豆腐、そば、ゴマ、アーモンド、チーズ、緑茶、抹茶などに比較的多く含まれています。
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 やや吸収されにくい亜鉛ですが、緑黄色野菜や果物に多いビタミンCや、レモンなどのクエン酸といっしょに摂ると吸収がアップします。牡蠣にレモンを絞って食べるのは、まさに理想の組み合わせですね。
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 サプリメントで補う方法もありますが、まずは食事からが基本です。サプリメントだけを頼るのは過剰摂取につながる危険性があります。いろいろなタイプのサプリメントがありますので、摂取量を守り、買われる際には薬剤師などに相談されるとよいでしょう。
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 私達は、甘味、塩味、旨味を美味しいと感じます。酸味、苦味、辛味は本来「腐敗している」、「毒がある」などの危険な味とみなします。しかし、酸味や苦味があっても安全な食べ物があることを経験の積み重ねで知り、やがて食べることを楽しむようになりました。また、子供の頃に食べられなかった酸っぱい味や苦い味も、大人になるにつれて美味しく感じるように味覚も成長、変化していきます。ちなみに大人の味、日本酒は”甘酸渋辛苦”の五つの味の調和によって、その美味しさが決まるそうです。
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 味を感じる「舌」が含まれる漢字には、活・乱・憩・話などがあります。食卓は楽しい会話のはずむ、リラックスした憩いの場でありたいものです。毎日の食事の乱れから亜鉛が不足し、味覚がわからなくなり、味気のない生活にならないようバランスのよい食事を心がけましょう。