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平均寿命と健康寿命

平均寿命と健康寿命

 今年6月、厚生労働省から平成22年の『健康寿命』の算出結果が発表されました。「健康寿命」とは、食事や排泄、更衣、入浴などに介護や支援を受けず、自立して日常生活を送ることが可能な期間を示します。初めて算出されたこの健康寿命、結果は男性70.42歳、女性73.62歳でした。
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 一方、平成22年の平均寿命は男性79.64歳、女性86.39歳と推計されています。ちなみに、平成23年は男性79.44歳、女性85.90歳で前年に続き2年連続で縮み、26年連続で世界一だった女性の平均寿命は、香港に次いで2位となりました。
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 『平均寿命』から『健康寿命』を差し引いた期間が、日常生活において何かしら不都合のある健康ではない期間といえるでしょう。平均寿命の延びに対して、健康寿命の延びは小さく、不健康な期間が延びていることが懸念されます。人生の晩年に10年も病気や認知症などで、寝たきりや介護を受けなくてはならないとすると、長寿を単に喜べなくなります。またこの差が広がるほど、医療費や介護費用の圧迫にもつながっていきます。
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 では、どうすれば健康で長生きできるのでしょうか。健康な長寿の方々の食事をみると「一日三食」。主食の米はしっかりと食べ、野菜を中心に肉よりは魚を多め、果物や大豆製品も欠かさない、アルコールは日本酒で1合未満・・・適量をきちんと食べて、栄養状態が良好な方が多いそうです。
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 私たちが毎日生活するためのエネルギーのうち、その約1/4を脳で消費しています。脳のエネルギー源は米、パン、めん類などに含まれる糖質のみです。一日の必要エネルギーの約半分を糖質で摂ることが理想ですから、主食の米は欠かすことはできません。
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 そして、魚(特に青魚)に含まれるDHA、EPAは動脈硬化予防や、血中の中性脂肪を下げる働きがあり、認知症のリスクを減らします。一日にひと切れは魚を食べるようにしたいです。また良質のたんぱく質源として、肉や卵、大豆製品も合わせて摂るようにするとよいでしょう。
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 緑黄色野菜や果物に含まれるカロテン、ビタミンE、ビタミンCには抗酸化作用があり、老化防止には欠かせません。さらには魚と同じく動脈硬化や認知症予防が期待できます。緑黄色野菜を中心に、その他の野菜、海藻、きのこ、芋類を加えて欠かさず摂りましょう。そして、味付けは薄味を心がけましょう。塩分の摂り過ぎは高血圧の原因となります。血圧が高い状態が続くと脳卒中、心筋梗塞、腎不全などの大きな病気につながります。
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 現在の高齢者は、今ほど医療の発達していなかった中で、長く生きてこられたのは、感染症や大病に負けない強い免疫力や抵抗力を持っていたこと。また食べるために歯や口腔の状態、消化吸収能力がしっかりしていたことも要素のひとつと言えます。
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 食事以外の面でも睡眠をしっかりとる(よく眠れる)、散歩や体操などの軽い運動を続ける、趣味や家族などの生きがいがあるといったことも健康長寿の秘訣のようです。もちろん個人差はあるでしょうが、長寿の方々に学ぶことは多くあります。
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 宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の中に「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ」という一節がありますが、昔の日本は米中心の食事でした。米に野菜と芋、豆、決して食べ物が豊富とはいえない時代でしたが、そんな粗食の中にこそ日本の食の原点があるのかもしれません。今や豊かさを通り越して、食べ物があふれかえり、余って廃棄される矛盾の中で、増えてきた生活習慣病、そろそろ粗食を見直す時期に来ているのではないかと思います。
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 戦後の平均寿命はわずか50歳、医療の進歩や食生活の向上などで飛躍的に延びて、今や世界のトップレベルになりました。しかし寝たきりや認知症の数も世界一と言われる日本。今後さらに延びるのか、短くなるのかはわかりません。ただ健康でいられる期間が短くなっては、長寿の真の意味はなくなってくるのではないでしょうか。
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 敬老の日に長寿者を敬うとともに、心身ともに健康な期間をできるだけ長く送れるよう、今からやっておくべきことを考え、実践していきましょう。