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栄養レシピ&コラム 2013年公開分
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見直そう乾物の力

見直そう乾物の力

 お正月にはお節料理を召し上がった方も多いことと思いますが、お節料理の中には、黒豆、田作り、昆布巻き、高野豆腐、干ししいたけなどの乾物を使ったものが入っています。一般的な乾物とは、生の食材を天日や風に当てて干し、乾燥させたものです。冷蔵庫や冷凍庫がなかった時代、乾燥させることで長く保存できるよう考えられました。
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 乾物と聞くとひじきや切干大根が思い浮かびますが、昔懐かしいおばあちゃんやお母さんの味でしょうか。今では、スーパーの惣菜の味なのかもしれません。現代っ子は食べたことはあっても、もとの形を見たことがなく、それが何から作られているのか知らない子も多いようです。切干大根を木くず、高野豆腐をせっけん?と、不思議そうに見ていたという話もあるほど。
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 乾物の特徴はなんといっても凝縮された栄養価とうま味成分にあります。生の食材とはまったく違う食感や風味も楽しめ、保存性があり一年中食べることができます。戻す手間や調理に時間がかかるものが多く、昔に比べると敬遠されがちです。ところが最近また乾物の良さが見直され始めています。そこでたくさんある乾物の中から身近なものを紹介します。
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 ふだんよく食べられているのが、昆布やワカメ、ひじきなどの海藻類でしょう。水溶性の食物せんいが多く、便秘の改善や大腸ガン予防に効果があります。またカルシウム、カリウム、鉄分などのミネラルが豊富です。特にひじきは鉄分と、鉄分の吸収を助ける銅が多いです。動物性食品を摂り過ぎる傾向にある現代人にとっては、積極的に食べたい乾物です。
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 豆腐を凍らせて脱水、乾燥して作る高野豆腐には、豆腐の栄養がぎゅっと濃縮。良質のたんぱく質が豊富で、必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。カルシウムや鉄分、亜鉛などのミネラル、もちろん大豆イソフラボンも含まれます。ぬるま湯に浸けて戻し、両手ではさんで絞ると白い液が出るので、水を2~3回替えて絞り煮含めます。最近は戻さないでそのまま煮ることができるよう加工された高野豆腐も売られています。
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 きのこの代表・しいたけは、血圧や血中のコレステロールを下げ、抗ガン作用のある成分を含んでいます。生よりも干したものの方が栄養価は高くなります。またカルシウムの吸収を助けるビタミンDが、日光に当てることでアップします。最近は機械乾燥が主流なので、買ってきたら20分程度日光に当てると良いです(生しいたけも同様にするとビタミンDが増えます)そして乾燥する過程で香りとうま味成分も数倍に増えます。干ししいたけは、できればゆっくりと時間をかけて戻し、うま味たっぷりの戻し汁もいっしょに調理しましょう。
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 大根を細切りにして乾燥させた切干大根は、水溶性と不溶性の両方の食物せんいが豊富。また生の大根に比べカルシウムやビタミンB群、鉄分などが干すことによってアップします。流水でよくすすいだ後、もむようにして洗い、たっぷりの水に浸けて戻し、絞ってから調理します。煮物以外にもサラダやみそ汁の具などにもおすすめ。戻した切干大根を甘酢で和えれば、その歯ごたえはシャキシャキ、しっかりと噛むことで唾液の分泌を促します。
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 あんこの原料となる小豆は、皮に含まれるサポニンに便秘解消や、疲労回復効果があります。鉄分や銅も多いので、貧血の気になる方にもおすすめ。甘いあんこだけでなく、かぼちゃなどの野菜といっしょに煮たり、塩味で茹でてご飯や汁物に混ぜるなど、甘くしない食べ方だとカロリーを気にしなくてよいでしょう。
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 その他にもゴマや大豆、うずら豆などの豆類、麩、ちりめんじゃこや桜えび、きくらげ、かんぴょう、春雨、だしの材料となる煮干やかつお節、果物を乾燥させたドライフルーツなどたくさんあります。
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 近頃は惣菜や半調理品、外食をする機会も多くなり、家庭での食事作りに時間をかけなくなっています。時々は乾物を戻す、だしをとる、時間をかけて煮込む・・・手間をかけて出来る美味しさを大切にしたいもの。そして昔から受け継がれてきた味を、子供たちに伝え残していかなければならないと思います。