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栄養レシピ&コラム 2013年公開分
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食べ合わせ、うそ?ほんと?

食べ合わせ、うそ?ほんと?

 突然ですが問題です。次の3つの食べ物それぞれに、体にわるいとされる食べ合わせは何でしょう。
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【1】うなぎと(   )
【2】スイカと(   )
【3】カニと(   )
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 こうした食べ合わせは、古代中国から伝わったものが多く、江戸時代には貝原益軒の養生訓などによって、庶民に広まったとされます。昔から言い伝えられてきた「食べ合わせ」は他にもたくさんありますが、あなたは気にしますか?しませんか?
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 さて問題の答えは、次のとおりです。
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【1】梅干し・・・胃酸の分泌を促し、食欲を増進させるため、うなぎを食べ過ぎてお腹を壊してしまうから。また高価なうなぎをたくさん食べるぜいたくを戒めるため。もしうなぎが腐って酸味があったとしても、梅干しと一緒だとわからず、食あたりを起こすなどの説があります。
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【2】天ぷら・・・油っこい天ぷらと、水分の多いスイカを一緒に食べると、胃腸に負担がかかり消化不良を起こしやすくなる。
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【3】柿(またはかき氷)・・・傷みやすいカニと消化のわるい柿、またどちらも体を冷やす性質があるので腹痛を起こしやすいため。
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 果たして本当にこの食べ合わせは体に良くないのでしょうか。現在では医学的根拠はまったくなく、一緒に食べても問題はないとされますが、食べ過ぎやぜいたくを戒め、体を冷やさない、消化不良や食中毒を防ぐなどの教訓が込められており、ただの迷信と無視できないところもあるのではないでしょうか。
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 では、栄養学的にみて良い食べあわせをいくつか紹介します。まずは鉄とビタミンC、植物性食品に含まれる鉄は動物性食品に比べて吸収されにくいのですが、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収が良くなります。たんぱく質にもその効果があるので、肉や魚介、大豆製品などと、ビタミンCたっぷりの野菜や果物をうまく組み合わせて食べると良いです。次にカルシウムとビタミンD、鮭やサンマ、きのこ類、卵黄などに多く含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨や歯への沈着を助けます。鮭ときのこのクリーム煮や、カルシウムの多い厚揚げとほうれん草の卵とじなどの料理がおすすめです。
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 抗酸化作用で細胞の老化を防いでくれるビタミンEは、ビタミンCと一緒に摂ることでさらに効果がアップします。ビタミンEはうなぎ、アーモンド、かぼちゃ、植物油などに含まれます。ビタミンCの多いパプリカとうなぎの炒め物やドレッシングにかんきつ類の搾り汁を加えるのも良いでしょう。さらにカロテンは油脂と一緒に調理すると、小腸での吸収率が高まります。カロテン豊富なほうれん草、トマト、にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜は、油を使った炒め物や、ドレッシングと和えてサラダに。また生のパイナップルやキウイフルーツには、たんぱく質を分解する酵素が含まれるので、肉類と一緒に調理すると、柔らかくなる効果があります。すりおろしたキウイフルーツを加えたタレに肉を漬け込めば、柔らかく仕上がります。
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 その他にも、寿司にガリ、刺身にわさびはつきものですが、これはガリやわさびの抗菌作用で、生魚の食中毒を防ぐ効果があり、消化を促進する働きもあります。焼き魚に大根おろしとレモン汁を添えれば、ビタミンCが焼き焦げの発ガン物質の生成を抑える働きをします。カレーにらっきょうは定番ですが、らっきょうに含まれる硫化アリルが胃の働きを助けてくれます。とんかつに線キャベツもよく見かける組み合わせですが、キャベツの食物せんいが、油分の吸収を抑える効果があります。このように普段は意識しないで当たり前に食べている食べ合わせにも納得の理由ありです。
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 一方で気をつけたい食べ合わせもあります。植物性食品に含まれる鉄は、緑茶や紅茶、コーヒーの渋味成分のタンニンと一緒に摂ると吸収されにくくなります。鉄欠乏性貧血の方は、食事中や食後すぐにはタンニンの少ないほうじ茶や麦茶がおすすめ。そして、生のにんじんやきゅうりに含まれるアスコルビナーゼには、ビタミンCを壊す作用があります。サラダなど生で食べるときには、酢やレモン汁を加えると、その働きを抑えるのでドレッシングなどに加えるとよいです。さらには、アルコールと一緒に辛子などの辛いものを食べると血流が促進され、かゆみや炎症を起こしやすいので、じんま疹や湿疹の出やすい方は避けた方がよいでしょう。
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 このように食べ合わせには、相乗効果で栄養価がアップしたり、効果を高めたりするものもあれば、互いに作用を消し合ったり、強くなり過ぎてわるい影響をもたらすこともあります。また良いものも度が過ぎれば悪影響になることも。食べ合わせの意味を知って、良くもわるくも偏り過ぎない食べ方を心がけましょう。