力強い野菜 オクラ
暑さも本格的になり、すでに食欲が出ないという方もいらっしゃるでしょう。夏バテ回復、暑気払いには夏野菜がおすすめ。なかでもとてもパワフルな力を持つオクラを紹介します。
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オクラの原産地であるアフリカ、エジプトでは2000年以上前から栽培されていました。日本に入ってきたのは明治時代、鹿児島や沖縄などの暖かい地方で作られていたようです。当時は青臭さと食感が好まれなかったようで、一般的に食べられるようになったのは、意外と最近で昭和40~50年代です。
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オクラはその小さな形に似合わず、1mを超える太い茎と大きな葉に、ハイビスカスに似た薄黄色の美しい花を咲かせ、先端をつんと空に向けて実がなります。開花後4~5日で実が5~10cm位になったらこれを収穫、それ以上大きくなると筋張って硬くなり、苦味が出てきます。オクラは小ぶりでやわらかい弾力のあるものがいちばん美味しいとされます。
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スーパーなどで見かける一般的なオクラの他に、沖縄や八丈島などで作られる島オクラは、長さが20cm以上もあり、断面は角がなく丸みのある形です。その他にも紅オクラ、白オクラ、ミニオクラなどの品種があります。また花オクラといって、花(蕾から咲いたものまで)を食べるものもあります。ヨーロッパでは女性の指先に似ていることから、レディースフィンガーと呼ばれているそうです。
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オクラの最大の特徴はなんといってもあのネバネバでしょう。ネバネバの正体は、水溶性の食物せんいのペクチンや粘性たんぱく質です。ペクチンは整腸作用を促し、便秘や下痢の改善に作用します。また血中コレステロールを減らし、血圧を下げる働き、さらには動脈硬化、糖尿病などの予防にも効果があります。粘性たんぱく質は胃粘膜の保護作用やたんぱく質の消化吸収を助ける働きがあります。その他にもカロテンが豊富で、粘膜や皮膚の健康維持、免疫力アップ効果が期待できます。ビタミンB1、B2、Cやカルシウム、カリウムなどのミネラル類も比較的多く含む力強い野菜です。
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オクラを美味しく調理するコツは「塩もみ」にありです。たっぷりの塩をまぶしてやさしくこすり水洗いします。こうすることで産毛がとれ、いっそう鮮やかな緑色になります。スライスしてかつお節としょうゆをかければ、あっという間に一品出来上がり。包丁で細かくきざんで粘りを出して、山芋や納豆と和えたり、冷や奴やそうめんにのせてもいいですね。硬さが気になるときや、やわらかいものを好まれる方は、沸騰した湯で30秒から1分さっとゆでてから刻むと口あたりがよくなります。また炒め物や天ぷら、煮物などの加熱調理にも向いています。みそ汁の具材としてもおすすめです。ネバネバや種のプチプチ感を楽しんだり、生や加熱の食感の違いを味わったり、いろいろな形でオクラを堪能できます。
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オクラを買うときは、緑色が濃く鮮やかなものを選び、切り口や部分的に茶色くなっているものは避けましょう。産毛がしっかりと残っているものは新鮮な証しです。オクラは暖かいところで育つ野菜なので寒い環境を嫌い、5℃以下になると低温障害を起こします。保存は冷暗所で、冷蔵庫に入れる場合は新聞紙で包んで野菜室に入れましょう。長く保存したいときは冷凍がおすすめ、塩もみの下処理をしたあと水気を拭き取り、そのままでも湯通ししてからでも、刻んでおくと解凍してすぐに使えて便利です。
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私たちにとっては暑さが厳しくなるこれから、オクラはいちばん美味しい時期を迎えます。オクラからパワーをもらって夏を乗り切りましょう。