和食の原点に学ぶ
新年を迎え、おせち料理や雑煮など、日本独特の食事をいただくお正月、みなさんはどんな食事を召し上がりましたか。最近は様々な食べ物が増え、いつでもスーパーやコンビニに行けることもあってか、日本の伝統的な食事や和食を食べることが減っています。食生活は豊かで便利になった反面、栄養や健康面からみると、乱れてきたと言わざるを得ない状況にあります。日本伝統の和食にはとても良いところがたくさんあるので見直してみませんか。
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和食の原点は鎌倉時代に大陸から伝来し、禅宗の僧侶によって伝えられた精進料理です。仏教の戒律によって殺生を禁じ、野菜や海藻、きのこ、穀物、豆、木の実、果物など植物性の食材のみで調理します。精進料理と聞くと、質素であまり美味しくないというイメージを持つ方もあると思います。しかし精進料理は素材を無駄なく使い、いろいろな工夫を凝らされた奥深い料理であり、学ぶところが多くあります。
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道元禅師が記した典座(てんぞ)教訓には、「五法」「五味」「五色」でもてなすという基本の考えが書かれています。「五法」とは、生、煮る、焼く、揚げる、蒸すの五つの料理法のこと。「五味」とは、甘味、塩味、酸味、辛味、苦味で加えて淡味の六味としています。淡味とは単に薄い味ではなく、素材そのものの味を活かした味付けという意味。「五色」とは、白、黒、赤、黄、青(緑)の色彩を現しています。素材の色はもちろん、お膳や器の色なども含め、見た目の色合いから、美味しさや食欲増進、清潔感、安心感といった意味まで込められています。
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そしてこの「五法、五味・五色」がそろっていれば、自然と栄養バランスのとれた献立になります。こうした精進料理は、茶の湯(茶道)の文化と交わり、懐石料理へと発展していき、日本の気候や風土の中で、和食という形が確立されて現在に至っています。
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和食は先の三つの「五」に加えて、「五適」「五覚」が大切にされてきました。「五適」とは、適温、適材、適量、適技、適心。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、年齢や性別など相手に合った素材を、多すぎず少なすぎない量を、技巧だけに凝り過ぎない手法で、料理だけでなく、器や部屋の雰囲気まですべてにもてなしの心を・・・なんという繊細な心配りでしょうか。
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「五覚」とは、視覚(色合い)、聴覚(音)、嗅覚(香り)、触覚(温度、舌触り)、味覚(味)という五感を最大限に使って美味しさを味わうという意味。私たち日本人は味だけでなく、歯ごたえや喉ごしなどの食感や見た目にもこだわり、美味しさを表現する言葉をたくさん持っているなと感じます。
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和食のていねいな下ごしらえや味付け、器選びから盛付け、食べる相手を思う心配り、これは家庭料理にもつながっています。決して特別なものではなく、普段から手に入る食材を使って、家族を思って調理をする。いただく側もその思いを受け止め、感謝する心や礼儀作法を学んできたのではないでしょうか。
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何か大切な日本の食の心を忘れつつある私たち、和食の原点に帰って、今一度考えてみたいと思います。