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栄養レシピ&コラム 2018年公開分
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大根、まるごと食べよう

大根、まるごと食べよう

 新年あけましておめでとうございます。当病院がある広島県北広島町では、11月下旬に少し早い初雪が積もり、毎日厳しい寒さが続いています。年末年始は忘年会、クリスマス、お正月などあり、数々のごちそうを召し上がった方も多いことでしょう。食べ過ぎ・飲み過ぎで胃腸や肝臓が弱ってしまう時期です。そんな時にこそ食べてほしい冬に欠かせない食材、大根を紹介したいと思います。
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 大根はキャベツやブロッコリーと同じアブラナ科の野菜です。大根の歴史は古く、エジプトのピラミッド建設に従事する労働者たちが食べていたという記録も残っています。日本の野菜というイメージがありますが、中国やヨーロッパでも盛んに栽培されています。現在日本では100種類以上の大根があり、皮の部分は真っ黒で中は白い黒大根や、種をまいてから40日で収穫できるという亀戸大根など珍しい大根も多くあるようです。スーパーでよく見かけるのは青首大根です。甘くてみずみずしく辛味が少ないので、生食や加熱にとどんな料理にも使いやすいのが特徴です。病気に強くスが入りにくく地上へせり上がってできるので、引き抜きやすく収穫が楽なため、全国で栽培されるようになりました。
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 大根は根が淡色野菜、葉が緑黄色野菜という2つの要素をもっています。根の部分の95%は水分で栄養素は少ないですが多くの酵素が含まれています。大根の辛み成分アリル化合物には、胃液の分泌を高めて食欲を増進し、血栓防止や解毒作用があることもわかっています。焼き魚に大根おろしを添えますが、魚の焦げなどに含まれる発がん性物質の分解作用があります。さらにでんぷんの消化酵素であるジアスターゼは、食べ物の消化を助けるとともに、腸の働きを整える効果があります。これらの酵素は熱に弱いので生で食べるのがよいでしょう。消化酵素は細かくするほど効果を発揮するので、大根おろしは特におすすめです。
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 また、捨ててしまいがちな葉の部分ですが、根の部分にはないカロテン、カルシウム、鉄分などのミネラルが豊富に含まれています。細かく刻んで炒め物やみそ汁に、下ゆでしてご飯に混ぜると美味しくいただけます。野菜が値上がりしているこの冬、捨てずに活用したいですね。
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 「大根役者」ということばがありますが、演技のヘタな役者を意味し、あまりよいイメージのあることばではありません。語源には諸説あるようですが、大根の白いところを、素人(しろうと)とかけたという説や、大根は消化を促進する成分を含み殺菌作用があることから、決して食あたりしないことに、どんな役を演じても当たらないをかけたとする説など、色々あるようです。
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 おいしい大根を選ぶポイントは、まっすぐに伸びて色が白く太いものがよいです。持ってみてずっしりと重い大根は、みずみずしく水分が豊富な証拠です。大根は葉を付けたままにすると、葉の部分から水分が抜けてしまうので切り離して別々に保存しましょう。乾燥させないことが大事なので、切り口はラップや新聞紙などで包み冷蔵庫で保存を。また、立てて保存すると大根のおいしさが長持ちします。
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 精進料理では、大根は白菜、豆腐と並んで「養生三宝」と呼ばれ冬の健康に欠かせない食材として数えられているそうです。寒くなるほど甘味を増す大根を食べて、新しい年を健康に過ごしたいですね。