良質なたんぱく質 鶏肉
肉類の中でも比較的エネルギーが低く、良質なたんぱく質を豊富に含んでいる鶏肉。国内での年間一人当たりの消費量も年々伸びており、季節を問わずいつでも美味しく食べることができます。子供からお年寄りまで人気が高く、様々な料理に欠かすことのできない優秀な食材です。
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鶏(にわとり)はもともと日本には存在せず、中国から朝鮮半島を経由して渡来したといわれています。古来鶏は、闘鶏用や時を告げる聖鳥として大事に扱われ、食べる対象ではありませんでした。食用として本格的に食べられるようになったのは江戸時代からで、茹でた鶏肉のだしで炊いたご飯と鶏肉を組み合わせた「鶏飯」が江戸中期に流行したとの記録があります。交易船により様々な品種の鶏が外国から入ってきたのもこの時代で、軍鶏やコーチンが人気を博しました。
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安定した価格でいつでも買うことができる鶏肉。市場に出回っている鶏肉の約9割がブロイラーです。ブロイラーとは、短期生産を目的としてアメリカで開発された鶏の品種で、日本では若鶏とも表示されています。鶏が成鶏になるには4~5ヶ月の期間を必要としますが、ブロイラーは約50日あまりで成鶏になります。焼いて食べることを目的に飼育され、加熱しても肉質がやわらかいのが特徴です。ブロイラーの出荷量は、北は岩手県、南は鹿児島県、宮崎県が全体の5割を占めており全国に出荷されています。
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その他には、品種や飼育方法など一定の条件を満たしたうえで飼育されているのが地鶏です。肉質は弾力性があり噛むほどに味わい深く、名古屋コーチンや比内地鶏が有名です。また、条件は満たしていないものの出荷までの日数、飼料内容など独自の工夫を加えて飼育されているのが銘柄鶏で、100を超える銘柄があるといわれています。
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捨てるところがないほど丸ごと食べられる鶏は、部位により栄養も異なります。
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・もも
足のつけ根からももの部分。程よく脂肪分がありジューシーな味わいで唐揚げ、ソテーなど鶏肉の中でも一番よく食べ られています。旨味も多くだし汁の役割もしてくれるため煮付けなどに加えると一層料理を引き立てます。三大栄養素がエネルギーにかわるのを助けるビタミンB2、貧血の予防効果があるビタミンB12が豊富です。
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・手羽
腕から羽先までの部分。羽先を手羽先。つけ根を手羽元と呼んでいます。骨や軟骨が多いため、血管や皮膚を丈夫にするコラーゲンやビタミンAが豊富です。
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・ささみ
笹の葉に形が似ていることからささみと呼ばれ、一羽の鶏から2本分のささみがとれます。肉類の中でもトップクラスの高たんぱく、低脂肪で身はやわらかく淡泊な味わいです。疲労回復や粘膜を守る働きのあるビタミンB群の一種ナイアインが豊富です。
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・胸
最近では健康効果が話題となり胸肉の需要が高まっています。その中でも注目されている栄養素がイミダペプチドです。鳥が飛び続けられるのは、羽を動かす胸の部分にこの成分が含まれているからとされています。イミダペプチドはアミノ酸が結合した成分で色々な動物の筋肉に含まれていますが、特に鳥の胸に多く含まれており、摂取することで抗酸化作用、疲労回復効果が期待できます。また、脳の老化防止にも効果があることが近年わかっており、認知症の発症を予防する食品として今後期待されています。
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当病院でも鶏肉を使った多くのメニューが登場しています。みなさんのご家庭でも、それぞれの栄養や部位の特徴をいかして、鶏肉料理のバリエーションを広げてください。