TOP
>
栄養レシピ&コラム
>
栄養レシピ&コラム 2019年公開分
>
大地の香り ごぼう

大地の香り ごぼう

秋も深まり寒くなってくると、美味しくなるのがごぼうやれんこん、大根、にんじんなどの根菜です。今回は根菜の代表ともいえるごぼうを紹介します。
*
 ごぼうの原産地はヨーロッパ、中国を経て薬草として渡来したといわれ、縄文時代の遺跡から種が見つかっているそうです。平安時代には宮廷料理に使われた記録があり、広く食べるようになったのは江戸時代に入ってからのようです。日本以外でごぼうを食用としている国はほとんどなく、日本独特の野菜といえます。ヨーロッパでは、木の根っこのようだと敬遠されてきましたが、最近ではその栄養面や味わいから、フレンチやイタリアンなどでも使われるようになってきています。
*
 根菜と称されるように、ごぼうとして食べているのは根の部分。旬は11~1月(若採りされた新ごぼうは初夏)で、主要産地は青森、北海道、茨城、宮崎県など。一般的に売られているのは、直径2~3cm、長さ1mほどの滝野川ごぼうです。太いごぼうとして有名なのが、千葉県の大浦ごぼうで、直径が10cmもあり、中は空洞になっていて、この空洞に肉を詰めて料理されます。京野菜の堀川ごぼうも、直径6~9cm、長さ50cmと太くて短いのが特徴です。
*
 ごぼうはカリウムやマグネシウム、亜鉛、銅などが比較的多く含まれますが、ビタミンはそれほど含みません。栄養面で注目されるのは食物せんいの多さでしょう。ごぼう100gあたり、5.7g(うち不溶性3.4g、水溶性2.3g)の食物せんいを含むのは、野菜の中でもトップクラスです。
*
 野菜に多く含まれる不溶性食物せんいには、便のカサを増す、腸の働きを刺激して、腸内の有毒物質の排出を促す作用などがあります。一方、水溶性食物せんいは、コレステロールや中性脂肪、糖質の腸内からの吸収を妨
げる働きがあるので、糖尿病や生活習慣病の予防効果が期待できます。また、乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きもあります。ごぼうは不溶性と水溶性の食物せんいのバランスがよいのが特長です。
*
 さらには、腸内の善玉菌を活性化させるオリゴ糖、腎機能を高め、糖の吸収をゆるやかにする働きのあるイヌリン、疲労回復効果のある必須アミノ酸のアルギニン、活性酸素を除去する抗酸化作用の高いサポニン、タンニン、クロロゲン酸といったポリフェノールの一種も含んでいます。
*
 ごぼう独特の風味や旨味、食物せんい、ポリフェノールは、皮の近くに多く含まれているので、できるだけ皮はむかずに食べたいもの。表面をタワシなどで軽くこすり洗いする程度にします。皮をむくときや、切るときに出てくる黒いアクはポリフェノールです。長時間水にさらすと、他の栄養分も水に流れ出てしまうので、水にさらすのは短時間、2~3分にとどめておきましょう。
*
 また、ごぼうは洗うときや、切るとそこから栄養分が失われるので、できれば土つきのものを選ぶのをおすすめします。表面に張りがあり、太さが均一でひげ根の少ないものが良質です。しんなりしているものは水分が抜けています。土つきは乾燥しないよう、新聞紙に包んで、涼しい所で常温保存を。洗ったものはキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。比較的日持ちはしますが、風味が落ち食感もわるくなるので、早めに食べましょう。ささがきにして冷凍すれば日持ちし、炒め物やみそ汁などにすぐ使えて便利です。
*
 ごぼうといえば、きんぴらがいちばんポピュラーな料理です。ささがき、せん切り、斜めうす切り、切り方や厚さを変えると、いろいろな食感が楽しめます。またポリフェノールには、消臭効果があるので、魚や肉といっしょに調理するとよいです。油との相性もよいので、煮物や汁物にするときにも、油で炒めると風味が広がります。ごぼうをはじめ、根菜類は調理に手間がかかりますが、ほっこりと温まる味を積極的にいただきましょう。