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健康寿命の延伸をめざして

健康寿命の延伸をめざして

 先日、厚生労働省から簡易生命表が発表されました。それによると2019年(令和元年)の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳(前年比+0.16歳)女性が87.45歳(前年比+0.13歳)となり、男女ともに過去最高を更新。女性は5年連続で世界2位、男性も3年連続で世界3位となりました。ちなみに世界一は男女ともに香港です。この20年で男女とも約5年延びており、今後も緩やかに延びていくのではないかとみられています。
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 では、健康寿命にも注目してみましょう。健康寿命とは「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。大きな病気やケガなどで、食事や排泄、更衣、入浴などに介護や支援を受けず、自立して日常生活を送ることが可能な期間を算出したもので、2010年(平成22年)に初めて発表されました。
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 健康寿命の最新のデータは2016年に発表されたもので、男性が72.14歳(2010年は70.42歳)、女性が74.79歳(2010年は73.62歳)と、こちらも平均寿命とともに延びています。しかし、その差は大きく男性で約9年、女性で約12年は、自立した日常生活ができない不健康な期間となっています。この差が広がるほど医療や介護費用の圧迫にもつながることに、いかに差を小さくしていくかが今後の課題です。若い頃とまったく同じというわけにはいきませんが、心身ともに少しでも健康に、人生の晩年を送りたいものです。
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 健康長寿のためには栄養、運動、社会参加の3つが大切になるといわれています。バランスのよい食事をしっかり食べることは、活動できる丈夫な体を作ることにつながります。おもに筋肉などの体を作るたんぱく質は、肉、魚介、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれます。体や脳を動かすエネルギー源となるのは脂質と糖質、米やパン、麺、いも、油脂、砂糖など。たんぱく質をしっかり摂取していても、エネルギー源の脂質や糖質の量が不足すると、たんぱく質をエネルギー源として使ってしまうので、主食のご飯などはきちんと食べたいもの。また、少量で高カロリーの油脂もうまく利用できます。そして体の調子を整えるビタミンやミネラル、食物せんいは、野菜、きのこ、海藻、果物などに多く含まれます。しっかりと摂るよう心がけましょう。
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 ご飯とみそ汁だけ、菓子パンや麺類のみといった食事ではたんぱく質不足になります。また高齢になると多く食べられず小食になりがちです。ご飯に卵やしらす干し、鮭フレークのふりかけをのせる、野菜や鶏肉を入れて炊き込みご飯にする、みそ汁には豆腐や卵、たっぷりの野菜を入れて具だくさんにする、野菜炒めや煮物には、肉類やハム、サバ缶、エビ、厚揚げ、ちくわといった、たんぱく質の多い食材を加えるなど、品数が少なくても栄養が補えるひと工夫を。一度に多く食べられないときは、間食にヨーグルトや牛乳、チーズ、野菜ジュースなどを取り入れるのもよいです。また、薬局やドラッグストアで売られている栄養補助のジュースやゼリーなどを、うまく利用するのもひとつの方法です。
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 そして、しっかり食べるためには口腔機能の維持も大切です。しっかり噛めないと、やわらかいものばかり食べることになり栄養不足に。さらに噛む機能が低下して、もっと噛めないという悪循環になります。日頃から歯科を受診し、口腔内を健康に保っておきましょう。
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 可能であれば、筋トレやウォーキングなどの運動を続けたいですが、掃除や料理などの家事や、庭や畑での作業など、自分に合った方法で体を動かしましょう。そして人と会って会話をする、地域の活動への参加で交流を持つ、趣味などで生活に張りや生きがいがあると、心身ともに健康で暮らすことができます。今年はコロナ禍で、これまでの生活が様変わりし、戸惑うことばかりです。まだまだ先の見えない状況ですが、健康に暮らせるよう、みんなで工夫し、助け合い、支え合っていきたいですね。