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栄養レシピ&コラム 2020年公開分
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緑黄色野菜の代表 ほうれん草

緑黄色野菜の代表 ほうれん草

 11月に入り日ごとに寒さが増してきました。秋から冬にかけ旬を迎える野菜がこれから多く登場し、食卓に並ぶメニューも豊かになります。そんな食材の中で、甘さが増しておいしくなるのがほうれん草です。
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 ほうれん草の「ほうれん」は、中国語でペルシャを意味し、ペルシャのある西アジアが起源といわれています。日本にほうれん草が入ってきたのは明治時代。当時のほうれん草は、アクが強く土臭いことからあまり好まれませんでした。昭和に入ってからも一般的ではなく、同じ葉物野菜なら小松菜の方が人気だったようです。日本でほうれん草が多くの人に知られるきっかけになったのは、アニメのポパイ。主人公のポパイがピンチの時にほうれん草の缶詰を食べることから、ほうれん草はパワーアップというイメージが広がりました。また、品種改良によりアクが少なくなり、栽培しやすくなったことも定番野菜の仲間入りをした理由です。
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 ほうれん草には、アジアへ伝わった東洋種と、ヨーロッパへ伝わった西洋種があります。東洋種は葉がやわらかく甘味があり、西洋種は葉が丸く厚みがあり病害虫に強いのが特徴です。日本で売られているほうれん草は、この2つを掛け合わせた交配種でそれぞれの長所を合わせもっています。また、生食用に改良されたアクが少なく葉がやわらかいサラダほうれん草や、冬の寒さにさらして育てる甘みの強いちぢみほうれん草などがあります。
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 いつでもスーパーで売られていることから季節がないように思われますが、暑さに弱く、寒さに強い冬野菜です。今では一年を通して栽培されていますが、夏と冬では味や栄養価に違いがあります。夏に栽培されるほうれん草は、日照時間が長く成長するスピードが早いため、十分に栄養が備わる前に収穫されます。一方、冬は茎や葉が寒さで凍らないようじっくり成長するため糖分やビタミン類などの栄養価が増え、また甘味の強いほうれん草が収穫されます。
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 緑黄色野菜でもあるほうれん草は鉄分が豊富。造血ビタミンの葉酸、鉄の吸収を助けてくれるビタミンCも一緒に含まれているため、貧血予防には欠かせない食材といえます。しかし、ほうれん草に含まれている鉄分は吸収率が低い非ヘム鉄です。吸収率をあげるためには、肉や魚介類に含まれているヘム鉄と一緒に摂取することで吸収率を高めます。ほうれん草は動物性の食材と一緒に組み合わせる料理がおすすめです。
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 また、調理の時捨ててしまう根元にも、骨の形成に必要なマンガンなどのミネラルが含まれています。根元は糖分が蓄えられているため、甘くシャキシャキとした食感で美味しいです。根元は土が溜まりやすいので洗いにくいですが、十字の切れ目を入れしっかり水洗いをして、葉や茎の部分と一緒に調理しましょう。根元まで食べるられるほうれん草は、まさに捨てるところがない優秀な野菜といえます。
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 ほうれん草料理といえばお浸しが定番ですが、世界各地にはさまざまな料理があります。ペースト状にしたほうれん草とチーズで作るサグパニールはインドではお馴染みのカレーです。また、にんにくとほうれん草を一緒に炒め、ヨーグルトやレモンで味付けするトルコのほうれん草サラダなど、日本とはひと味違う食べ方があるようです。料理のレパートリーを増やして栄養豊富なほうれん草をたっぷり食べたいですね。