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栄養レシピ&コラム 2012年公開分
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暑い夏を乗り切る!

暑い夏を乗り切る!

 今年も一年の半分が過ぎ、本格的な夏を迎えました。気象庁の発表によると、今年の夏は平年並みか、それ以上の暑さになりそうだとのこと。猛暑が続くとやはり心配なのは夏バテです。今回は、元気に夏を乗り切るための水分補給と栄養バランスを考えた食生活を送るためのポイントを紹介します。
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 暑くなると最も心配なのが、「脱水症」です。ニュースなどで取り上げられることもあり、耳にされた方も多いかと思います。では、どうして夏に脱水症が起こりやすくなるのでしょうか?
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 私たちの体に含まれる水分の割合は、成人男性では約60%、女性では約55%です。高齢者では約50%まで減少し、新生児では70~80%と高めです。また、成人で一日に1.5~2.5リットルの水を、飲料水や食物に含まれる水分から摂取し、1.5~2.6リットルの水を、尿や汗として体の外に排出しています。
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 健康な状態であれば、このように一日あたりに体を出入りする水分量はほぼ同じで、バランスがとれています。しかし、スポーツなどで大量に汗をかいたり、全く水分を摂らないなどの理由で、体内の水分が異常に減少すると、バランスがくずれてしまいます。この状態を『脱水』といいます。
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 脱水状態が続くと、尿の量が減り、血液の粘度が高まって血管が詰まりやすくなります。頭痛や食欲不振、脱力感などの症状が出ることもあり、大量の水分が失われると最悪の場合、生命に関わることも。夏はたくさんの汗をかいて、体の水分が失われやすいため、最も脱水症が起こりやすい季節です。とくに高齢者は体内の水分量が少ない上に、暑さや喉の渇きを感じにくくなっているので、注意が必要です。
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 脱水の予防に最も効果があるのは、やはり水分の摂取です。目安として、食事以外に一日1~1.5リットルの水分を摂取することをおすすめします。とは言っても、一日に1リットルも水を飲むなんて大変!と思われる方もいらっしゃるかと思います。ポイントは、『ちょこちょこ』と『さいさい』です。いつでも身近にお茶や水のペットボトルを置いておく、お風呂に入る前と後に、必ずコップ1杯の水を飲むように習慣づける、おやつはゼリーやスイカなどの水分の多いものにするなど、ちょこちょことこまめに、たびたび水分摂取できるように工夫して、脱水を防ぎましょう。
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 しかし、よく冷えた水やお茶をたくさん飲むと、胃腸も冷えすぎて消化能力や食欲も落ちてしまいます。冷えたものばかりでなく、常温または温かいものを飲むと体への負担が少なくなります。また、ビールなどのアルコール飲料には利尿作用があり、体内の水分を取り込んで、飲んだ以上に水分を排出するので、水分補給にはなりません。暑い夏、冷えたビールをぐいっといきたいところですが、夏バテ予防のためにも控えめに。
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 次に食事のポイントについてです。夏はどうしても食欲が落ちてしまいがちです。ついついあっさりとして食べやすい冷たい麺類や清涼飲料水に手が伸びます。麺類や砂糖などの炭水化物に栄養が偏ってしまうと、これを体内でエネルギーに変えるために、「ビタミンB1」がどんどん使われます。ビタミンB1が使われすぎて不足すると、炭水化物を摂取しても体内でうまくエネルギーに変えることができず、乳酸などの疲労物質がたまって疲労感や食欲減退を招き、夏バテの原因になってしまいます。
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 夏バテ予防のポイントは、バランスのとれた食生活です。ご飯や麺類などの炭水化物に加えて、野菜、肉や魚などのたんぱく質、海草類など色々な食材をまんべんなく摂ることが大切です。お酢や梅干し、しそやみょうがなどの薬味は、味覚を刺激し、食欲増進効果があります。またお酢や梅干しに含まれるクエン酸は、体内に疲労物質をたまりにくくします(参考:コラム「いい塩梅で」)。
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 ビタミンB1は豚肉やうなぎ、豆腐や枝豆などの豆類に多く含まれます。豚肉は煮たり焼いたりするのもいいですが、湯通しすると余分な脂分が落ち、さっぱりと食べやすくなります。また、にんにくやねぎに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収を助けてくれます。豚しゃぶにして、ねぎや玉ねぎと一緒に食べると夏バテに効果抜群です。
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 うなぎの蒲焼は、うな重ももちろんおいしいですが、味が濃いので野菜と一緒に炒めたりすれば、栄養バランスも整います。うなぎと言えば、“土用の丑の日(今年は7月27日)”。うなぎは万葉集で「夏痩せによしというものぞ 鰻とりめせ」と詠まれたほど、古くから夏に栄養をつけてくれる食材でした。土用の丑の日にうなぎを食べるようになったのは、江戸時代の発明家、平賀源内の発案であるというのもよく知られた話です。
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 これから夏休みやお盆、夏祭りなど、楽しい行事も多いことと思います。こまめな水分補給とバランスのよい食事で、夏を元気に乗り切りましょう。