日本の歳時記と食~秋・冬~
暑い日が続きますが、夏バテなどされていませんか?夏バテに効くといえばやっぱりうなぎ。7月の土用の丑の日には、近年の漁獲量減少などの影響もあり、うなぎの高騰がニュースでも話題となりましたが、やはり丑の日にはうなぎ、と召し上がられた方も多いのでは。
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そんな切っても切れない季節の行事と食。2月のコラム「日本の歳時記と食~春・夏~」に引き続き、今回は秋・冬の行事と、関わりの深い食べ物について紹介します。
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■秋(8~10月)
お盆(8月13~16日):先祖の霊を供養する行事。日本人にとって、お盆はお正月と並ぶ大切な行事で、嬉しい出来事が重なることを例えた「盆と正月が一緒に来る」という言葉があるほどです。地域によっても様々ですが、広島県北部ではお墓に色鮮やかな灯篭を立て、先祖を迎えます。離れて暮らす家族が集まって、ごちそうを食べたり盆踊りをしたり、先祖に感謝するとともに秋の豊作を祈ります。
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十五夜(9月中旬頃):「中秋の名月」とも呼ばれ、一年の中で最も空が澄み、明るく美しく見える月を楽しむ行事です。同時に秋の収穫を祝う行事でもあり、とくにいも類の収穫を感謝して、さつまいもや里芋をお供えすることから、「芋名月」とも呼ばれます。欠かせない月見団子は、平年は12個、うるう年には13個飾るのが通例だそう。
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■冬(11~1月)
七五三(11月15日):子どもの3・5・7歳の節目に、無事に育ってくれたことに感謝するとともに、これからの成長を祈って氏神様にお参りをします。現在ほど医療が整っていなかった昔には、子どもの成長は今以上にありがたいことでした。千歳飴は江戸時代に浅草で売り出されたのが始まり。長く伸びる飴には、子どもの長寿への願いが込められています。千歳飴の袋にも、鶴亀に松竹梅など、縁起のよいものが描かれます。
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冬至(12月22日頃):一年でいちばん夜が長く、昼が短い日です。寒さはこの頃から一段と厳しくなります。冬至には「ん」のつく食べ物を食べると運が呼べるとされ、なんきん(かぼちゃ)、れんこん、にんじん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うどんは冬至の七種(ななくさ)といわれています。とくにかぼちゃにはβカロテンやビタミンEがたっぷり。風邪予防や冷え解消に最適です。また、柚子を浮かべた柚子湯に入ると風邪を引かないといわれます。柚子の香りにはリラックス効果や血行促進、美肌効果も。
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大晦日(12月31日):一年最後の日、大晦日には年越しそばが定番。11~12月にかけては、新そばがおいしい時期でもあります。年越しそばには、そばが細く長く伸びることから、細く長く幸せに暮らせますようにとの願いが込められています。そばには良質なたんぱく質や食物繊維、疲労回復に効果的なビタミンB1、皮膚を健康に保つビタミンB2、高血圧予防効果のあるルチンが豊富。栄養素が溶け出したそば湯もいただきましょう。
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お正月(1月1~3日):お正月といえばおせち料理です。おせち料理にはそれぞれに願いが込められ、家事に追われる女性が少しでも休めるようにと、味が濃く日持ちがするものが中心。近年では手作りおせちのほかに、デパ地下などで扱われるぜいたくなものや、子どもも喜ぶ洋風おせちも人気です。お屠蘇(おとそ)は、屠蘇散(とそさん)という山椒や桔梗、肉桂などの漢方薬を、日本酒やみりんに漬け込んで作った薬酒。飲むと一年の邪気が祓われ、延命長寿が得られるといわれています。お雑煮は神様にお供えした餅と若水でつくります。地域によって餅の形や仕立て方に特徴があり、当病院のある北広島町では、ゆでた丸餅にすまし仕立てで、ハマグリが入るのが一般的です。
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七草粥(1月7日):春の七草は、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな(かぶ)、すずしろ(大根)。一年の健康を祈って七草粥を食べます。冬に不足しがちなビタミンを補い、お正月料理で疲れた胃を休める効果があります。
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春・夏編と2回に分けて、食と関わりの深い日本の歳時記をご紹介しました。春・夏・秋・冬と移り変わる自然に恵まれた日本。歳時記には季節に寄り添った暮らし方、健康に過ごすための知恵、自然や家族に感謝する気持ちが詰まっています。そんな季節の行事を楽しいイベントで終わらせず、そこに込められた願いにも思いをめぐらせ、これからも大切に受け継いでいきたいものです。