気になる油脂のはなし 2
みなさんはトランス脂肪酸という言葉を聞かれたことはありますか?マーガリンやショートニングという油脂に多く含まれる脂肪酸です。今このトランス脂肪酸の摂り過ぎによる弊害が心配されています。いったいどんな脂肪酸なのでしょう?
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毎朝、トーストにマーガリンを塗って食べる方は多いと思いますが、マーガリンは高価なバターの代用品として、約40年前に考案され、世界に普及しました。マーガリンは大豆油やコーン油などの植物油からできています。本来は液体である植物油に、水素添加することで硬化(固体)させています。マーガリンから水分と添加物を除いて、純度の高い油脂にしたのがショートニングです。水素添加をするときにトランス脂肪酸が生成され、マーガリン100g中約7%、ショートニング100g中約14%がトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸は化学的に精製された油脂といってもよいでしょう。
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ショートニングは真っ白な固形状で、肉類の冷めて固まった脂に似ています。パンや焼き菓子に使うと、さっくりと焼き上がり、無味無臭の油脂のため、素材の味が生かせます。また揚げ油として使うと、衣がパリッとサクサクした食感に仕上がるので、外食や市販の揚げ物によく使われています。酸化や劣化しにくいショートニングはとても使い勝手のよい油脂なのです。
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本来トランス脂肪酸は、食品から摂る必要のない油脂といわれています。摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDL(善玉)コレステロールを減少させ、動脈硬化や心臓病のリスクを高めるとされます。また、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、さらには免疫機能、認知症、糖尿病など、多くの病気との関連を指摘されています。
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これまで日本人はそれほど多くのトランス脂肪酸を摂るような食生活ではないので、あまり注目していませんでした。農水省はトランス脂肪酸の摂取量の目安を、総エネルギーの1%未満、約2g未満であればよいとしています。2008年に行った調査結果からも一人一日当たりの摂取量は0.92~0.96gと推定されているそうです。日本の数倍のトランス脂肪酸を摂取しているアメリカでは、2006年から表示を義務付けるなど、摂り過ぎにならないよう規制を始めました。アメリカ以外の先進国においても、いろいろな形で規制をする国が増えてきています。
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気になる油脂のはなし1で述べたように、私たちが生きていく上で油脂は欠かせないものです。どんな油脂をどのくらい摂るのかが重要ですが、目に見えない形で含まれているものが多く、把握するのが難しいところもあります。まずは商品の包装に書かれている情報を見るようにしてみませんか。原材料、栄養価などからわかることもあります。そして同じ食べ物、調理法に偏らない食生活を心がけましょう。